マンチェスター・ユナイテッド vs マンチェスター・シティ:|| 攻略された「可変式3+2」を読み解く
:||を使ったのは、この前「シン・エヴァンゲリオン」を観たからです。勿論、エヴァンゲリオンのネタバレはないのでご安心ください。
今シーズン、プレミアリーグの中心となっている街こそがマンチェスターだろう。昨年の覇者リバプールが守備陣に相次ぐ離脱に翻弄されている今、首位を独走するマンチェスター・シティのパフォーマンスは傑出している。彼らの宿敵として知られるマンチェスター・ユナイテッドも好調を保っており、マンチェスター・ダービーは激戦が予想されていた。そして、実際にマンチェスター・ダービーは「マンチェスター・シティ封じ」を目指した複数のチームによる試行錯誤の集大成として、非常に見るべきところが多いゲームとなった。その世界レベルの駆け引きを、もう一度読み解いてみよう。
◇こいつ・・・動くぞ!シティの「可変式3+2」
それ、エヴァじゃない。
マンチェスター・シティにとって、左ジンチェンコ+右カンセロという両サイドバックが「偽サイドバック」になれる組み合わせは、1つの興味深いパターンを彼らに与えることになる。それが、ジンチェンコが左サイドバックの位置に残ることで「右サイドバックのスペース」を空にするプレーだ。このシステムは右サイドを逃げ場にしながら、左を中心に相手のプレッシングを牽制していく。最大の利点は、「スピードに劣るロドリのサポート」だろう。
シティのビルドアップはロドリがマンツーマンで封じられると「機能不全に陥る」だけでなく、カウンターで彼の周辺を狙われることが少なくない。カンセロをセントラルハーフのような位置に移動させる「偽サイドバック」として起用することは、2ボランチのような構成で彼のサポートを可能にする。これはロドリの特性を考えた場合、1つの解決策を提示している。これは古くはアントニオ・コンテの「ピルロ活用」に遡るが、スピードに劣るMFの横をフォローする人材を置くことは攻守両面でメリットがある。最もシンプルなパスコースを与えながら、トランジションでのカバーも可能にしていくのだ。
◇「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」
若干リバプール戦とは異なるが、デイビッド・モイーズが「偽サイドバック&可変式3+2」には見事な攻略法を提示している。この試合でマンチェスター・シティは右サイドバックにウォーカー、左サイドバックにジンチェンコを起用。ウォーカー起用時のパターンとして、彼が右センターバックに移動する「3バック化」+「ジンチェンコの偽サイドバック」というアプローチで試合に挑む。この試合では、ロドリではなくフェルナンジーニョがスタメンだった。
余談ではあるが、ジンチェンコを偽サイドバックで起用する場合のメリットについて考えてみよう。本職がサイドバックのカンセロと比べて、中央でプレーすることに慣れているジンチェンコは「ハーフスペースへのアクセス」を最も得意としている。左にジンチェンコを配置する場合は、左ハーフスペースのギュンドアンやスターリングへの縦パスが武器になっていく。一方のカンセロはジンチェンコよりもプレーエリアが広く、ゲームのリズムを変えるプレーを得意としている。