フジゼロックススーパーカップ 川崎 vs G大阪 マッチレビュー
川崎フロンターレ「アップデートを目指す破壊者」
ガンバ大阪「天皇杯決勝とは、異なるアプローチ」
川崎の応手「水面のような家長」
ガンバの反撃 「山本 悠樹が、日本代表デビューさせるべき選手である理由」
劇的な決勝ゴールと、今後の展望
https://www.jleague.jp/fxsc/2021/
コロナウイルスの流行によって、過密日程に対応しなければならなかった昨シーズンを終えた戦士たちは、ゆっくりと休む間もなく新たなシーズンに突入する準備を進めている。天皇杯とリーグの2冠に輝いた川崎フロンターレは、チームの象徴として長年中盤の要としてチームに貢献した中村 憲剛が有終の美を飾ることになる。物静かで温和な性格ながら、ピッチでは誰よりも輝きを放つ姿は、川崎サポーターの脳裏に焼き付いているはずだ。サッカーのシーズンをスタートする恒例行事となるフジゼロックススーパーカップは、元々は天皇杯王者とリーグ王者が対戦する試合だ。しかし、前述したように川崎は2冠を達成。結果として、相手はリーグ2位のガンバ大阪となった。奇しくも天皇杯決勝と同じカードは、今シーズンも激しく争うことになる2つの強豪チームにとって悪くないウォームアップになったはずだ。今回はシーズンの序章となるゲームから、2チームの展望を探ってみよう。
「今回の記事構成」
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川崎フロンターレ「アップデートを目指す破壊者」
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ガンバ大阪「天皇杯決勝とは、異なるアプローチ」
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川崎の応手「水面のような家長」
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ガンバの反撃 「山本 悠樹が、日本代表デビューさせるべき選手である理由」
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劇的な決勝ゴールと、今後の展望
〇川崎フロンターレ「アップデートを目指す破壊者」
ボールを保持しながら主導権を握るという「根本的な哲学」において、川崎フロンターレは日本的なチームだ。テクニックに優れたMFを揃えたチームは「細かいパスを狭いスペースでも丁寧に繋ぐスタイル」を実現させており、手厚い攻撃で相手を自陣に押し込んでいく。もう少し、彼らの工夫について掘り下げてみよう。天皇杯決勝でも顕著だったが、川崎の選手は無理にターンをしようとすることが少ない。あくまでも目の前でシンプルにボールを動かし、遠くのスペースを見やすい選手が逆に展開する。これは技術に優れた選手に「出来る限りシンプルにプレーさせる」川崎の工夫だろう。
テクニックに自信がある選手はどうしても手数を増やそうとする傾向にあるので、川崎はこのメカニズムによって中盤のパス回しを加速している。
このシンプルなメカニズムを中盤で使いながら、両翼のアタッカーがアクセントになっていく。川崎の攻撃は変幻自在だったが、そこには今季からポルトガルに移籍した守田 英正の存在も大きかった。中盤の底でプレーしながら攻撃ではサイドで3人目となるアンカーは、特殊なプレースタイルで「数的優位」の創出を可能にしていた。名古屋グランパスから獲得したジョアン・シミッチは、守田と比べるとタメを作ろうとするタイプ。その特性の違いは、川崎にとって1つの変化となっている。
〇ガンバ大阪「天皇杯決勝とは、異なるアプローチ」
結果は出しているものの、どこか掴みづらいチームとして昨シーズンを過ごしてきたガンバ大阪。元日本代表センターバックとしても活躍した甘いマスクの宮本監督だが、特徴としては「ボール非保持の局面」に強みを発揮するタイプであることだろう。暴力的なボール狩りで相手を圧倒するMF井手口 陽介を中核に、ガンバの中盤はプレッシングで相手を苦しめる。
天皇杯決勝でも、3バックを選択しながらも「ミドルプレス」のようなラインを保つことを意識していたガンバ大阪は、チーム全体の意識として「中盤でボールを奪うこと」を捨て切れなかった。スペースを消そうというフォーメーションと、井手口不在の中盤。それでも下がりきれなかったことで、川崎の攻撃を浴びる時間が続いてしまったのだ。
その反省もあったのか、今回のガンバ大阪はプレッシングの方向性を修正。特徴的だったのは両ワイドの「外切り」だ。一度ビルドアップする川崎相手にポジションをセットすると、センターバックがボールを持つタイミングでサイドバックへのパスコースを消すようにプレッシングにシフト。外へ逃げるコースを奪うことで中へのパスを誘発し、そこで井手口がボールを刈る。シミッチの位置も厳しいプレッシャーを浴びており、彼らの先制パンチは成功した。セットのタイミングと仕掛けるスイッチが明確になっていたことで、川崎が序盤ガンバのプレッシャーを嫌がる時間帯があった。