J1ドラフト会議 2020 「感想戦」

2020年12月23日、世間がクリスマスプレゼントの準備を急ぐ年末に「J1ドラフト会議」に参加させて頂きました。今回は、その感想戦となります。
結城 康平 2020.12.25
誰でも

 アーセナルファンであり、以前から野球のドラフト会議を模して選手を各参加者が示していく「○○ドラフト会議」という企画を運営・配信している「せこ(@seko_gunners)さん」にお呼び頂き、「J1ドラフト会議 2020」に参加致しました。年々運営に参加される方も増えており、開催される度に規模も大きくなっている興味深い企画です。

 運営の皆様、今回はお誘い頂きまして有難うございました。

 今回は完全に場違いなのですが「有識者枠」としてお誘い頂きまして、J1についての知識が明らかに「参加者の中でも最下位」という厳しい状態でスタート。相手はJリーグを知り尽くした各チームのサポーターと、プロの記者。そして、フットボール分析界における「大御所」として知られる「らいかーると氏」と「スケゴー氏」。

 「普通に勝負してはダメだ」と考えた私は知り合いのスカウトから情報を得ながらデータ・プレー動画を「テスト前の一夜漬け」のようなイメージで予習。「仕事か!」と突っ込まれるような緻密な準備で、選手指名のプランを練りました。

 今回は絶妙なタイミングで仙台に遠征する用事があり、「ベガルタ仙台 vs 湘南ベルマーレ」を観戦。実際に視察した中で気になった選手をスカウトと共有したところ、1人は「元々リストに入っていた」ということを教えて頂き、もう1人は「スカウトもチェックしていない選手」であることが判明しました。そこで、恐らく指名される可能性が低いであろう後者の選手を中心とした「チーム戦術」を考え、今回の「指名方針」を固めていきました。なので、実は「サプライズ指名ありき」のプランだったのです。

第一巡希望選択選手:ミチェル・ランゲラク(名古屋グランパス)

 柏レイソルの前線で得点を量産し、「旋風」を巻き起こしたマイケル・オルンガ。そして、ヴィッセル神戸の象徴となったアンドレス・イニエスタ。絶好調だったセレッソ大阪の清武弘嗣や、川崎フロンターレの三苫薫。彼らの獲得も狙いたかったところですが、競争の激しさを考慮して「優先は守備」と判断したことは、間違っていなかったと考えています。今季絶好調だったガンバ大阪の東口順昭や、セレッソ大阪の守護神キム・ジンヒョンも候補でしたが、ランゲラクを選んだ理由は数シーズンのパフォーマンスにおける「浮き沈み」の少なさでした。データを考慮しても、2019シーズンと2020シーズンの両方で高いレベルのパフォーマンスを継続しているランゲラクであれば、大崩れはないだろうという考えです。ビルドアップでのボール扱いはそこまで得意ではありませんが、セービングは唯一無二。GKとしての能力と安定感で、他に並ぶ選手はいないと判断しました。

 安定感を支えるのが、ポジションを細かく修正する精度と準備の質。動画の局面でも、クロスを蹴られた状況に対応してポジションを調整しながら正しい向きで準備することで難しいバウンドに対応しています。

第ニ巡希望選択選手:マティ・ヨニッチ(セレッソ大阪)

 予想以上に1位がアタッカー・中盤に集中し、早々に消えるかと不安だったセンターバックが指名されていない展開に。中盤の底を任せられるJリーグでは貴重な守田英正(川崎フロンターレ)が邨田さんに指名されたのは予想の範囲内でしたが、「2位指名で取れないかな…」と思ってた江坂任(柏レイソル)を96さんが外れ1位で指名したのはショックでした。得点・アシストの両方で貢献する万能アタッカーを失ったので、まずは守備の強化に集中。ロティーナ監督が率いるセレッソ大阪の堅守を支えたマティ・ヨニッチを指名しました。187センチの高さと跳躍力で相手のクロスボールを跳ね返す空中戦に加え、東欧のCBらしくタフな対人戦もJリーグ最強クラス。年齢も29歳とセンターバックとしては伸び盛りで、統率力もあることから彼を選出しました。

 必要なタイミングではインターセプトも狙いますが、最大の魅力は粘り強い対応からのシュートブロックとタックル後の立ち上がるスピード。相手のシュートを潰しながら、次のプレーを指示するキャプテンシーが最高です。

第三巡希望選択選手:家長 昭博(川崎フロンターレ)

 ニ巡目でセンターバックが数人消えた状況で、とりあえずヨニッチを獲得したことに一安心。GKとCBにJリーグ屈指の外国籍選手を獲得した安心感もあり、そろそろ攻撃の選手をということで「天才」家長 昭博をチョイス。優勝した川崎フロンターレの右ワイドで衰え知らずのセンスを発揮するアタッカーは、独特なリズムからのアシストパスやキープ力で攻撃の中心として機能。更に今季ゴール期待値が+2.5以上という「難しい位置からゴールを狙うセンス」も考慮し、彼の獲得を決定しました。江坂は取られてしまいましたが、多少孤立させても時間を作ってくれるという点では家長も十分に勝負可能と考えての判断です。

第四巡希望選択選手:三竿 健斗(鹿島アントラーズ)

チアゴ・マルチンス(横浜・F・マリノス)や畠中 慎之輔(横浜・F・マリノス)が消えることは予想通りでしたが、密かに獲得を検討していたベガルタ仙台のシマオ・マテをかしまわりさんが獲得したのは誤算。もう少し後かと考えていたので、少し焦りました。そうはいっても、比較的順調には進められていたので「守備のセンターライン」を強化することを優先。日本には希少な「動き過ぎるのではなく、スペースを的確に埋める」ことが可能な選手として、鹿島アントラーズの三竿 健斗を抜擢しました。まだ24歳と若いですが、周囲の状況を把握する能力に優れていることで先読みしたようにスペースを消していきます。川崎の守田 英正が指名されていたことで、中盤のセンターとなれる選手の獲得を少し焦った面もあります。

 奪取力だけでなく、ボールを奪った後に狭いスペースでボールを守ったり運ぶようなプレーも得意としているのでカウンターの起点としても機能します。

第五巡希望選択選手:パトリック(ガンバ大阪)

4位指名まで三苫が残っていたのは意外でしたが、逆に獲得を躊躇していたところでらいかーると氏が獲得。かしまわりさんに倉田 秋(ガンバ大阪)を獲得されてしまったのは、地味にショックでした。このあたりから配信にて「結城さんのチーム、めちゃくちゃ喧嘩強そう」みたいに言われており、パトリックは正直そのネタに引っ張られました。前線はレアンドロ・ダミアン(川崎)か、金崎 夢生(名古屋グランパス)というバランスに優れたアタッカーを起用する予定から、空中戦の鬼に変更。このあたりからジェイ(コンサドーレ札幌)とパトリック(ガンバ大阪)で悩み始めるという予定外の状況に突入します。ただ、結果的に中盤にクリエイターを指名しなかったので「パトリックで良かったかもしれない」という気持ちも。

パトリック🇯🇵patric🇧🇷
@patricaguiar
みなさん確認お願いします。わたしがんばってます。📝🇯🇵💪😬😅
2020/12/23 10:13
272Retweet 5610Likes

 帰化して、日本代表になりたいと言ってくれていることも嬉しいところです。

第六巡希望選択選手:谷口 彰悟(川崎フロンターレ)

 1人Jリーグ屈指のドリブラーを獲得していく、らいかーるとさん。坂元 達裕(セレッソ大阪)は必殺のドリブルで相手守備を切り崩していくアタッカーとして魅力的ですが、家長とポジションが被るので残念ながら辞退していました。ここで「今のうちに川崎フロンターレ枠を使ってしまわないと、マズい」と考えたことで二択に突入。センターバックとして出色のパフォーマンスを披露した谷口 彰悟(川崎フロンターレ)とMF田中 碧(川崎フロンターレ)で悩みました。元々ユース世代からボールの受け方、ボディアングルが好きな田中も魅力的でしたが、「悩んだら守備優先」の方針を継続。谷口の獲得で、センターバックのコンビが決定しました。

第七巡希望選択選手:ヒシャルジソン(柏レイソル)

 またマッチョ!と配信が騒然としていたのですが、彼は元々の予定にあった指名。どこで獲得すべきかと考えていたのですが、両サイドバックを若手にすることもあって「サイドのサポートが可能で、タフに走り回れる守備的MF」は必須でした。無駄走りを厭わずに守備で貢献するだけでなく、推進力やビルドアップのサポートも可能。激しさだけがクローズアップされがちですが、気の利いた万能選手だと思っています。ファールは多いですが、チームのために犠牲になれる選手は貴重。

第八巡希望選択選手:土居 聖真(鹿島アントラーズ)

 らいかーるとさんの長谷川 雄志(大分トリニータ)獲得に、完全にパニック。中盤のクリエイタータイプを1枚は獲得しようと思っていたのですが、既に川崎枠を使い切っているので田中 碧はダメ。中村 憲剛や大島 僚太も当然指名されているので駄目ということで、中盤をどうしよう問題が浮上。中盤を決めきれなかったので、急遽左のアタッカ―として鹿島アントラーズの土居 聖真を先に指名。元々サッカーIQに優れた選手であり、受ける側でもパスを出す側でも活躍可能な柔軟性が決め手になりました。地味に左ワイドも倉田 秋(ガンバ大阪)と阿部 浩之(名古屋グランパスエイト)の本命2枚が既に獲得されていたので、ここも危ないと思っての指名です。土居と家長なら、周りがどんな選手でも成立させてくれそうだなと。

第九巡希望選択選手:柴戸 海(浦和レッズ)

 中盤に悩んだ結果、苦肉の策。最後まで井手口 陽介(ガンバ大阪)と悩みましたが、流石に井手口とヒシャルジソンは「特攻の拓」過ぎると判断。ただでさえ一昔前のプレミアリーグみたいな構成になってしまっているので、少しでも柔軟なプレーにも対応できそうな柴戸 海(浦和レッズ)をピックアップ。キャプテンシーもありそうだし、荒れ狂うチームをまとめてくれるかな?という期待も込めての選出です。

第十巡希望選択選手:畑 大雅(湘南ベルマーレ)

 現地観戦したときにピックアップし、欧州在住のリストでも上位に置かれていたので指名を決定。父親がプロボクサーだから、乱闘に強いと思って選んだ訳ではないんです。上下動を繰り返すだけでなく、現地観戦した仙台戦ではボールを浮かせて突破するなど判断力も披露。足下のテクニックも悪くないですし、クロスの精度も平均より高いかなと。湘南の前線が小さい選手だったのでニアばかりを狙っていましたが、もっとエリア内に色々なボールを供給可能な選手だと考えています。凍えそうな仙台のピッチで、筋肉の張りを気にしながらも走り続けたメンタルにも光るものがありました。

第十一巡希望選択選手:照山 颯人(ベガルタ仙台)

 こちらはスカウトのリストは関係なく、個人的に一目惚れしたセンターバック。今回の隠し玉であり、彼を右サイドバック兼センターバックに置くことが決定してからチームの構成を決めていきました。柏レイソルユース出身ということでモダンなボール扱いに優れた選手で、冷静沈着な持ち上がりと縦パスの供給が魅力。特に中央よりも3バック的なポジションからボールを持っていくプレーが光っており、同時にオフ・ザ・ボールでインナーラップを仕掛けるなど大胆なプレーも素敵でした。

フォーメーション・チーム戦術

 基本となるのは、4-3-3。セントラルハーフが鉄壁で、そこを抜けてもヨニッチと谷口。ゴール前にはランゲラクという圧倒的な守備力を誇ります。攻撃は手札の多いダブルシャドーを起点にしますが、難しければパトリックにロングボールというシンプルな逃げ場も用意。また、家長のキープ力を活かして全体を押し上げてからのハイプレスというのも狙いの1つです。奪われても中盤で即時奪回し、判断スピードに優れた土居を走らせます。

 そして、照山と畑を使うことによって可能になるオプションが3バック化。攻撃力のある畑を押し上げながら、照山が持ち上がりからの縦パスで起点になります。柴戸を一列前に動かし、ヒシャルジソンは裏のスペースも意識してカバー。家長にボールを当てられれば、そこからの展開として右サイドを崩すことも左サイドを広く使うことも可能です。また、土居はトップ下に近い位置に移動させることでゴールを意識してプレーさせます。

さて、長くなってしまいましたが「ドラフト会議の感想戦」を楽しんでいただけましたでしょうか?これも含めて、ドラフトの楽しみだと思っております。また是非、同じようなイベントがある場合は楽しみにしています。

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