「永久保存版」プレッシングを攻略する5つの方法

今回は、UEFA Aライセンス指導者の提唱する「プレッシング攻略の5類型」をベースに「プレッシング全盛の時代に抗うアプローチ」を紹介する。個人能力としての「プレッシング耐性」にも言及しながら、破壊的なプレッシングを打ち破る術を考察していこう。「永久保存版」と題したが、何度か読み返して貰えればこれ以上の幸せはない。
結城 康平 2021.01.13
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 ラルフ・ラングニック。独自のフットボール哲学によって多くの若手指導者を魅了し、ブンデスリーガに「派閥」から多くの指導者を輩出した男は、イタリアの革命家アリーゴ・サッキの哲学を源流としている。

 現代フットボール史にも間違いなくその名を刻む「ゲーゲンプレッシングの信奉者」の存在は、今でもボールを保持しようとするクラブを苦しめている。世界でも屈指のビルドアップ技術と組織力で知られるFCバルセロナが、昨年のCLで屈辱を味わったのは記憶に新しい。ドイツ代表で長期政権を築いているヨアヒム・レーヴの右腕として知られたハンス=ディーター・フリック率いるバイエルン・ミュンヘンは、苛烈なプレッシングでバルセロナのパス回しを無効化。普段は中盤の底でゲームを指揮するブスケツをマンツーマンで抑えながらDFラインを襲撃するプレッシングによって、バルセロナを混乱に陥れた。特にバイエルンが印象的だったのは、極端なハイラインだ。プレッシングを成立させることを第一に考え、DFラインを大胆に押し上げる。

 前線からのプレッシングで相手の自由を奪うことは、「時間のコントロール」という視点でも重要だ。ペップ・グアルディオラを筆頭とした「ボールを保持する」アプローチを好む指揮官は、自軍が主導権を握る時間を増やすことで不確定要素を減らしていく思想をベースとしている。彼らは自分たちがゲームのペースを自由にコントロールするには、ボールが必要だと考えている。そういった主導権を半ば強引に奪い取るのが、「ゲーゲンプレッシング」の目的だ。

 イングランドのプレミアリーグを例にしても、ゲーゲンプレッシングを好んでいるのはユルゲン・クロップだけではない。好調のサウサンプトンを率いるオーストリア人指揮官ラルフ・ハーゼンヒュットルは元々「ラングニック派」の一角を担っており、アストン・ヴィラのディーン・スミスも激しいプレッシングを好む。アルゼンチンの智将マルセロ・ビエルサも、前線からのマンツーマンプレッシングを戦術の核としている。マンチェスター・シティのようにボールを保持することを好むチームであっても、連続的な波状攻撃を仕掛けるには敵陣で相手のボールを奪取しなければならない。結果として、対戦する両チームが敵陣からのプレッシングを仕掛けていくようなことも珍しくない。

 当然、目的は1つではない。格下のチームとすれば「主導権を握る時間を奪うこと」であり、格上のチームは「カウンターを防ぎながら、波状攻撃に繋げること」を狙っている。

今回は「プレッシング攻略法」としての5つのアプローチを紹介しながら、更に個人戦術の面にも言及していく。現代フットボールにおいて欠かせない「プレッシング対策」について考察することで、観戦における視野を広げていこう。

1, Around the press "プレッシングの迂回"

 プレッシングの外側を迂回しようとする選択肢は、中央を優先して防ぐプレッシングをリスクを軽減しながら回避するものだ。サイドのスペースで奪われても、そこから直接的なカウンターを浴びることは少ない。同時にライン付近への縦パスであれば、失敗してもラインの外に出るケースが多い。ボールを失うにしても、一度ゲームが止まれば守備陣形を整備しやすい。だからこそ、プレッシングの逃げ場としてサイドの活用は「最も使用頻度が高い選択肢の1つ」だ。

元々サイドの後方に位置するSB(サイドバック)から縦パスを狙うのは、オーソドックスだ。しかし、サイドバックからサイドハーフへのシンプルなパスは狙われやすい

 ワイドアタッカーが背負ってボールを受けなければならず、そうなってしまえば武器であるスピードも活かせない。だからこそ、下の動画のように中盤が流れることでサイドに数的優位を作るパターンが、1つの必修すべき連動となる。サイドバックは人ではなく、縦のスペースにボールを供給。そこに流れたセントラルハーフが経由され、ワイドの選手が裏を狙う。リバプールのようにセントラルハーフがワイドに流れることを得意とするチームでは、このようなプレーに適応しやすい。特に本職がサイドアタッカーであり、サイドバックも経験したジェームズ・ミルナーは適役だ。ジョーダン・ヘンダーソンジョルジニオ・ワイナルダムもサイドのプレーに順応するので、彼らもサイドに流れてのプレーを問題なくこなす。リバプールの例と同様に、4-3-3はこういったプレス回避が楽になっている。特に守備的なMF1枚、攻撃的なMF2枚という構成がベストであることは間違いない。

 基本的にはリスクを軽減しやすいが、中盤がサイドに流れる瞬間はどうしても中央が薄くなるので、サイドバックから中盤へのパスを奪われると手痛い反撃を食らうこともある。中盤の動くタイミングが肝要で、中央へのパスコースを警戒させながら緩急を意識しながら外に流れる必要がある。サイドに走りながらプレーするMFの視野は限られているので、先に状況を把握しながらプレーする必要があることについても言及する必要があるだろう。

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