「経験資産」から予測した「未来のスター」の現状。「GK編」前編
2017年、UEFAとの繋がりも深い研究機関CIESが発表した「未来のスターを見つける方法」というレポートは、示唆に富んだものだった。世界の頂点である欧州のトップリーグで活躍するためには、若い頃に試合に出場して経験を積むことが重要だといわれており、
CIESは欧州で活躍する選手の「経験資産」を測定。彼らは独自にリーグのレベルなどに合わせた算出方法を作り、十分な「経験資産」を持つ若手選手を「未来のスター」として紹介した。今回は、彼らが3年後のヨーロッパでどれだけ結果を出しているのかを調査することによって「経験資産」という指標がどこまで正確なものだったかを考えてみよう。
CIES Football Observatory Monthly Report Issue no. 14 - April 2016
図:欧州5大リーグにおいて、経験が豊富なGK
チームの最後尾から守備陣に指示を出しながら組織を整え、ピンチでも冷静なセーブでチームに安定感を与える。比較的運動量が求められないこともあり、選手寿命が長いのがGKのポジションだ。
41歳でも現役を続けている南 雄太(横浜FC)のように、チームを支える年長者の存在も大きい。同時にポジションが1つしかないことで、正GKを若手が奪取することは極めて稀である。それは、ヨーロッパでも同様だ。
今回は経験資産が、各世代の1~3位となる選手の現状を探ってみよう。便宜的に、現状のキャリアは◎・〇・△の3段階で評価することにする。
1996年以降生まれ(2020年現在、24歳以下)
ジャンルイジ・ドンナルンマ (21歳)◎
ACミランの宝石は、名門のゴールに守護神として君臨。セリエAに180試合以上出場しており、既にその安定感は他を圧倒する。
セービングスタイルは体躯を活かした「待つ」スタイルで、近距離からのシュートでも軌道に合わせてキッチリと反応するプレーを得意としている。
ヨシプ・ポサヴェツ(24歳)△
反応を活かしたビッグセーブで魅せるタイプのGKは、19歳で加入したパレルモで30試合に出場。セリエAでレギュラーポジションを掴んだが、徐々にトーンダウン。
クラブのセリエB降格もあり、現在はクロアチアのハイドゥク・スプリトで正GKを務めている。10代の若さで欧州挑戦を決めた俊英だが、市場価値も当時と比べると下がってしまっている。今後の追い上げに期待したい選手だ。
ポール・ベルナルドーニ(23歳)〇
18歳でトップチームデビューを果たしたフランス人GKは、ボルドーで徐々に序列を下げるとレンタル生活に。
フランスリーグをレンタルで渡り歩き、今年アンジェと4年契約を締結。渡り鳥になりつつあるが、23歳の時点でリーグアン92試合に出場していることはポジティブな要素だろう。
1995年生まれ(2020年現在、25歳)
ムエズ・アセン(25歳)△
飛び抜けた経験資産を示していたチュニジア代表GKは、2014-15シーズンには正守護神として30試合に出場。フランスのアンダー世代でも代表として活躍していたGKは、リーグアンのOGCニースで存在感を発揮する。代表でも正守護神のポジションに定着するが、2018年に肩を負傷。
そこから徐々に不調に陥り、特にハイボールでのミスが目立つようになっていく。現在はベルギーのクラブ・ブルージュとの契約が切れ、フリーエージェントとなっている。不安定なパフォーマンスを酷評された過去2シーズンを乗り越え、復帰が噂されるリーグアンで再びポテンシャルを発揮することが出来るのだろうか。
ルベン・ブランコ(25歳)〇
今季は怪我で出遅れているが、セルタ・デ・ビーゴの守護神は着実にキャリアを重ねてきている。
市場価値も一時は1000万ユーロ程度に上昇するなど、25歳の年齢を考えれば順調だ。既に100試合に出場するなど、十分なトップリーグでの経験も魅力的だ。
ステップワークに優れ、近距離からのボールにも的確に反応する。
ピエルルイジ・ゴッリーニ(25歳)◎
CLで躍進したアタランタに後押しされるように、評価を高めているのがピエルルイジ・ゴッリーニだ。
2019年にはイタリア代表でもデビューした男は、マンチェスター・ユナイテッドに青田買いされた資質を開花させつつある。
重心を落とすような予備動作からのセービングは独特だが、予備動作自体に隙が生まれないような切り替えのスピ―ドも兼ね備える。
後半記事は、購読者限定となります。上のボタンから、無料購読を登録頂ければ嬉しいです。後半は、2020年現在「欧州屈指の守護神」に成長したプレイヤーも登場します。
引き続き後半も、是非お楽しみ頂ければと思います。
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