世界で一番わかりやすい「サリーダ・ラボルピアーナ」解説。(後半)

難解な専門用語も少なくない「欧州フットボールの戦術」という世界への入り口として、可愛らしいtori(@gib_mir_3pt)さんのイラストを使いつつ、紹介する解説記事の「後半」になります。あなたもこれを読めば、明日から世間話の中で「サリーダ・ラボルピアーナ」というワードを使えるかもしれません。
結城 康平 2020.10.14
誰でも

今回は『世界で一番わかりやすい「サリーダ・ラボルピアーナ」解説。』の後編となります。

もしまだ前編を読んでいない方がいれば、下記から公開しておりますので、是非セットで読んで頂けると嬉しいです!

実際の試合を想定した「ふくろう先生の講義」だ!

後半ではもう少し複雑に、実際の試合におけるケースを考えてみよう。

赤チームは青チームのGKからのパスを封じようと、青チームのCBにプレッシャーをかける。赤チームのDFラインは青チームの前線に対して、前半でも説明したように「1人多い」状態だ。相手のサイドバックと中盤も、マンツーマン状態になっている。

こうなると、中盤の底に位置するMFが「誰にもマークされていない」選手になる。誰にもマークされていないということは、つまり最もリスクの少ない選択肢だ。

彼は前を向く時間と余裕を与えられており、チームとしては彼を使うのが最も妥当な選択肢となる。このようなパターンはボールを保持しているチームの理想となる。GKからのパスを受けながら前を向ければ、一気にチャンスになるケースもある。慌てて彼のボールを狙おうとすれば、どこかにフリーの選手が生まれてしまうことが多いからだ。

ふくろう先生「基本の配置になれば、中盤の選手への縦パスが有効。ここでプレッシャーを軽減するのに、中盤の選手が下がっていくことで相手の中盤から離れる『サリーダ・ラボルピアーナ』は効果的なのです」

それでは、相手チームが強引に数的優位を消しにきた場合はどうなるのだろう。

後ろに配置したCBとMFの3枚に相手がマンツーマンを仕掛けた状況では、両サイドのSBがフリーとなる。中盤とCBを全員マンツーマンで消された状況でも、両SBへの浮き球が逃げ道になるのだ。

この浮き球の中距離パスは現代サッカーでは頻出形であり、多くのGKがこういったパスのトレーニングを重ねている。ここで正確なパスを出せれば、フリーのSBが前にドリブルすることで大きなチャンスになるからだ。

ふくろう先生「前に仕掛けてくる相手には、GKからの浮き球でサイドバックを使おう。『サリーダ・ラボルピアーナ』の副次的な効果で彼らは前に移動しており、そこでフリーになっていることが多いのです

EURO2016 フランス代表の攻撃陣形。
EURO2016 フランス代表の攻撃陣形。

これも実際の試合をベースとした例だが、MFが下がることでCBに積極的なプレーをする余裕を与えている。周りの選手が近い位置で囮になることで、FWが使うスペースが生じているのだ。

CBが参加することで右サイドの数的優位を作っており、FWを加えることで瞬間的に「4 vs 3」の状況を生み出す。

1列後ろに移動するMFの役割は後方に数的優位を作ることであると同時に、CBが奪われたスペースをカバーすることでもあるのだ。そういう意味では、攻守一体の戦術だと考えることも可能だ。

この戦術の発案者として知られているのは、アルゼンチン人指導者リカルド・ラ・ボルペだ。選手時代のペップ・グアルディオラは晩年メキシコでプレーしており、ラ・ボルペのフットボールに感銘を受けている。

当時スペイン紙エル・パイスにコラムを寄稿していたグアルディオラは「デート」というタイトルで、ラ・ボルペのフットボールを表現した。サッカーのコラムにしては、斬新なタイトルである。彼はMFが1列下がる動きから、両脇のCBがドリブルでボールを運んでいくアプローチを「デート」に例えたのだ。

メキシコではCBは「ボールという恥ずかしがり屋の女性」をデートに連れ出す役割を求められており、どこに行くかを選択するのは彼らだった。ボールを失うリスクがあっても、主導権を持って攻撃に参加することを恐れないメキシコ人CBから、グアルディオラは1つのアイディアを得ることになる。

「サリーダ・ラボルピアーナ」とは「MFを後ろに下げることで数的優位を確保し、リスクを軽減する策」であると同時に、「CBが積極的に攻撃を仕掛けるリスクを許容する」メカニズムなのだ。

この記事をキッカケとして、意識が高そうで難解なカタカナ語である「サリーダ・ラボルピアーナ」を忌諱していた方や、戦術をあまり気にせず観戦していた方にも、このメカニズムを知って貰えたら嬉しい。

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